一度、玄関のドアを大きく開けて。
閉める。
何も変わらないように見えて?
太陽が室内をのぞきこんで、フローリングは少し日焼けした。
風が少しだけ吹き抜けて、ホコリは引越しを余儀なくされる。
鳴るはずのなかった音が鳴って、
雨上がりの草の匂いが混ざって、
指紋のべったりついたドアノブは、
ほら、ちょっとだけ君色の銀色。
劣化を早めたちょうつがいが語りかけるよ。
「俺は誰が為に錆びるのか?」
嬉しそうに泣いて、切なそうに鳴いて。