【そのまま】


小雨が降ってきたので傘を差した。

たとえば雨が、雨粒が、ごっそりと固まって、5分に一粒、巨大なものが降って来るようなものだとしたら、それに当たるのは事故のようなもので、今ほど傘は普及しなかったろうけれど、その代わり万が一事故に遭っても無事で済むような、防水服が一般的になっていたような気がする。

傘は、ずい分前から進化していないように思う。折りたたみとか、ワンタッチとかあるけれど、そこにたいした差はない。開いてT字、閉じて剣状、一方向の雨を防ぎ、風は防げない。平安時代にあっても気にならない形状。シルエットだけでとらえれば、あの、何かの絵巻物で、蛙が大きな葉っぱを持って傘代わりにしているやつ。あれもまったく傘だ。そう考えれば、原始時代から、あの形状の雨避け道具「傘」はあっておかしくない。

おそらく、理科染みて考えれば、二足歩行による腕の自由化と、当たっても痛くない程度の、けれど定期的に降り注ぐ雨粒。たったこのふたつが、「傘」という発想が誕生する条件なんだと思う。たったのそれだけだから、今まで特に進化しなかった。たったのそれが、とても重要で、像の足並みのように緩やかな変化をするタイプのものだから、傘は早急の変化を求められていないのだ。

合理性の中に、言い表せない微妙な不便さを持ち合わせる、人間と共存するデザイン。与太話染みて考えれば、神話もシェークスピアも最近のドラマも、結局同じ展開で、なのに人は相も変わらず泣くとするなら、そんな代わり映えしない理由で零れ落ちる、涙が蒸発して作る雨雲を防ぐのに、たいした進化は必要ないのだ。

神話は不変の愛を語った。

街角の男は変な愛を騙った。

そこにたいした差はないんだ。

雨がやんだので傘を閉じる。すると、誰かの寂しさが雨を呼び戻し、また傘を差した。
しばらくして止み、やがてまたポツポツと。
あんまりそれが続くので、諦めたようにみんな、傘を差しっぱなしで歩いた。
なんだか不便なようで、実はそこまで不快ではない。人間と共存するデザイン。
空から見下ろせば、今地表には、
幾層もの蓮の花が咲いているように、見えるかもしれない。
そう考える余裕すらある。

いずれ止み、閉じる。

そこにたいした差はないんだ。

いずれ闇、綴じる。傘重なり、愛も変わらず。

そこにたいした差はないんだ。

傘を避ければ、虹が見えるだろうし。


 




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