(闇)
それは、ある秋の夕暮れのことだった。


(校庭の隅。イチョウの木の横に、一人の少年が立っている)
風の強い日だった。

(木と少年のアップ)
なんだか、心がうきうきしてきた。

(少年の横顔のアップ)
身体が、すうっと軽くなって。


(闇)
飛べるような気がしたんだ。







【風の強い日】








(空中。少年の視点)
気がついたら、

(少年の全身を横から)
僕の身体は宙を舞っていた。


(少年の足)
僕にはわかっていた。

(少年の腕)
これは、夢だということ。

(少年の顔)
早く、目覚めないといけないこと。


(闇)                                 
でも、僕は、夢から覚めるつもりなんてなかった。

(校舎
 黒板「未来を目指す羽は君たちが持っている!」
 教科書とノートが、机に広げられている
 進学塾、勧誘のポスター
 うつむいている少年)
ここが、僕の世界なんだ。

(少年の全身)
ここが、僕の現実なんだ。


(闇)
夢なんかじゃない、僕の現実なんだ。





(前方から、旅客機が近づいてくる)
フフフ。

(すれすれを通りすぎる少年。ガラス越しにこちらを見つめる、
 操縦士と乗客。機体に、少年の影がうつる) 
アハハ。

(旅客機、雲に包まれ、見えなくなる)





(見渡す限り海。目の前の夕日が、少年と雲に影を創る)
風の強い日だった。

(夕日、徐々に明るさを失っていく)
なんだか、心がうきうきしてきた。

(少年の横顔。涙が溢れ出す)
身体が、すうっと軽くなって。

(少年、目を閉じる。風に流されていく涙)
飛べるような気がしたんだ。


(夕日のアップ)
僕にはわかっていた。


(校庭のイチョウの木に、教師が近づく。枝に、上着やズボンがひっかかっている)
 「誰だ。こんなところに着替えを忘れてったのは?」

ここは、僕だけの現実だということ。

(コックピット。操縦士が、無線で連絡を取っている)
 「何?子供が飛んでいたって?」
 「ほ、本当なんです。なんというか、その、、、」

  「笑って、いました。」







わかっていたんだ。

(校庭。イチョウの木と、その横に立つ少年)
もう、二度と戻って来れないという事も。

(少年の顔のアップ。涙が風に流される)
でも、でもね。

(涙が、雲の間を駆け抜けていく)
風の強い日だったんだ。





(闇)
飛べるような、そんな気がしたんだよ。



(幕)








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