「 机上の戦争 」
山口県立 滝川西高校 2年 宮原 雫
(3)
机がまっさらになってから、2日後の昼休み。
真相は意外な所から入ってきた。
千佳の友達が音楽室の掃除当番で、第3者の正体を知っていたのだ。
火曜は、午前中にうちのクラスの授業があり、午後から千佳の授業がある。
なので、掃除に来たときにはすでに最初のやりとりが成されていた。
面白がって音楽の渡辺先生に報告した所、渡辺先生も『残してみたら』と言ったらしい。
「あの渡辺が?鑑賞中とかにしゃべったらめちゃ怒るクセに」
「静かにしちょかんにゃいけんのやろ。別に書くのはええってことやないんかね?」
そういうものなのだろうか。
「で、正体は?」
「それがさー・・・渡辺らしいよ」
私たちのやりとりは掃除メンツ、そして渡辺先生にウケており、ずっと観戦していたそうだ。
そしていよいよ千佳が絵を描いたとき、先生が思わず『上手い!』と書いてしまったと。
「まじで・・・そうやったんや」
「けど、そしたら急に書き込みが増えて、収拾つかんくなったけぇ、消したんて」
「はぁー」
たまごサンドをほおばりつつ、千佳もため息をつく。
「ねー。折角新しい出会いとか思いよったのに」
「渡辺と付き合ったら?」
「髪無いじゃん」
千佳はそう言ったが、私の方は
「センセー、今度ビバルディのCD貸してぇや」
その一件以来、渡辺先生に興味を持ち、よく話をするようになった。
ついでに
「野間君クラシックとか結構聞くんて!今度CD貸してくれるって」
同じ部活の男子とも仲良くなった。
「脈アリなんやないん?行けるって」
里子が茶化す。
戦争は終結したが、私の青春は続く。
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